【技術レポート】ABCG2遺伝子多型検査~痛風ハイリスク群の早期発見と発症予防

2012/12/03

痛風と遺伝子変異

痛風は尿酸値が高い人に起こる生活習慣病です。血液中 の尿酸値が高くなると、激しい関節痛の発作を引き起こすほ か、高血圧や脳卒中などのリスクとなることが知られていま す。以前は中年以降の男性に多い病気であると考えられて いましたが、最近では20~30代で発症する患者さんも見ら れています。  尿酸値を上昇させる要因としては、食事の総量が多いと いう食生活、ビールなどプリン体を多く含むアルコールの摂 取、ストレスや激しい運動、腎機能の低下などの病気、薬剤 の影響などが挙げられますが、高尿酸血症を発症しやすい 家系が存在することから、遺伝的な因子の関与も推定されてきました。

痛風ハイリスク群を発見

この痛風と遺伝の関連を継続して調べてきた防衛医科 大学の松尾洋孝講師らを中心とする研究グループは、 2013年6月に腎臓の尿酸処理に関連するABCG2遺伝子に 特定の変異がある男性は、20代以下でも痛風発症リスク が22.2倍も高くなるという報告を英国科学誌に発表しま した。  まずABCG2の遺伝子変異による尿酸排泄の機能低下が、 5 図2  ABCG2の機能低下と痛風発症リスク 倍高めることが分かりました(図1参照 痛風の発症にどのような影響を与えるのか検討するため、 ABCG2の機能低下と発症年齢に与える影響について調べ ました。その結果、ABCG2の遺伝子変異により尿酸排泄機 能が低下している群は、機能低下していない群に比べ、平 均発症年齢が最大で6.5歳低い(若い)ことが分かりました。  さらに、痛風の既往がなく尿酸値が正常である男性を健 常者群として、患者群と比較検討すると、ABCG2の遺伝子変 異がある場合、20代以下での痛風発症リスクを最大で22.2倍高めることが分かりました(図1参照)。また、20代以下で 発症した痛風患者の約90%にABCG2の遺伝子変異が見ら れました。  なお、20代以下での痛風発症リスクは、ABCG2の機能が 中程度落ちている場合(機能50%)でも15倍、軽度に落ちて いる場合(機能75%)でも6.5倍高めることが分かりました。 このようにABCG2の遺伝子変異はどの年代でも痛風の発 症リスクを高め、特に若年齢層での発症リスクを高めること が判明しました。  図2は健常人及び痛風患者におけるABCG2遺伝子変異 の割合を示したもので、尿酸排泄機能の低下度が中央上 から順に25%以下、50%、75%、100%と4段階に分けたもの で、やはり3~ 10倍ほど痛風発症リスクが高まる結果が 出ています。

遺伝子検査により痛風リスクが判明

当社では、この発見を発展させ、痛風・高尿 酸血症の発症リスクを評価する遺伝子検査の受託を開始し ました。  この遺伝子検査の結果は、高尿酸血症患者に対してより 積極的な生活習慣の改善や服薬治療の開始時期を考慮す る上で有用な情報となります。また、尿酸値が正常な人に 対しても、自分自身の痛風発症リスクを早期に知ることに よって生活習慣を改善する意識づけがしやすくなります。  すでに、ABCG2遺伝子多型検査を実際の患者診療に活 かしている痛風専門のドクターは、「今まで医師も患者も生 活習慣が悪くて高尿酸血症や痛風になったとお互いに思 い込んでいたところ、実はABCG2の遺伝子変異による機 能低下が存在していたことを知ってその頻度の高さに驚 いている。これからは、今まで健康診断の結果を見て、運 動しなければならない、お酒に気を付ける必要がある、と どの患者にも一律に指導していたものを、ABCG2の機能 低下のある人には尿酸値がさらに上がる危険性が高いの で頑張って下げなければいけないと集中的に指導し、そ のリスクの低い人に対してはリスクの高い人よりも緩い指 導をしていく、といったオーダーメイドの医療が可能にな る。」と話しています。  さらに若い世代の痛風発症の予防は、将来的な高血圧や 脳卒中の予防にもつながり、長期的な医療費の削減にも結 び付くことが期待されています。

【参考文献】 1) Matsuo H, Takada T, Ichida K et al: Science Translational Medicine, 1, 5ra11 (2009). 2) Matsuo H, Ichida K, Takada T et al: Scientifi c Reports, 3, 2014 (2013). (Published 18 June 2013)

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