PON1 & PAF-AH
酸化ストレスマーカーパラオキソナーゼ 1(PON1) および血小板活性化因子アセチルヒドラーゼ(PAF-AH) 測定系の開発

酸化ストレスと血管障害
血管障害により発症する心筋梗塞・脳梗塞などの疾患の主因として血管に対する酸化ストレスがあげられます。心筋梗塞および脳梗塞は、それぞれ心臓にある冠動脈および脳にある動脈の動脈硬化によって誘発され、ともに重篤な疾患です。動脈硬化は、炎症や喫煙などの酸化ストレスにより誘導される以下の4つの段階 を経て形成されます。① 酸化ストレスによる活性酸素 (ROS) の産生、② ROS によって血中 low-density lipoprotein (LDL) が酸化 LDL に修飾、③血管内皮マクロファージ が酸化 LDLを貪食して泡沫化マクロファージに変換、④ 泡沫化マクロファージの集積による動脈硬化層の形成1 従って、酸化ストレスは動脈硬化の進行のトリガーとして作用する因子であり重要な役割を演じています。

血管障害の予測因子
酸化ストレスによる血管障害予測因子として HDL に結合して作用する抗酸化酵素の測定が有効であると予測しました。心筋梗塞の発症は high-density lipoprotein (HDL) コレステロール濃度と逆相関することが疫学調査により明らかにされています。その理由として、HDL の血中の余剰コレステロールを肝臓へもどすコレステロール逆転送および LDL の 酸化LDL への修飾 (前述した ② の段階) を防止する抗酸化・抗炎症作用が知られています。特に、 後者は、生体内で HDL に結合して存在する抗酸化酵素のパラオキソナーゼ 1 (PON1) 2および血小板活性化因子アセチルヒドラーゼ* (PAF-AH3  の働きによることが明らかにされています。われわれは、心筋梗塞・脳梗塞発症リスクとこれらの酵素の関連を調べるためこれらの酵素の測定系を開発しました。

 * リポタンパク質結合ホスホリパーゼA2 (Lp-PLA2) とも呼ばれています。

血中 PON1 測定系の特徴
われわれが開発した PON1 活性は、有機リン酸系化合物の代謝物であるパラオクソンを基質としてパラオキソナーゼ活性、および酢酸フェニルを基質としてアリルエステラーゼ活性を測定します
4。PON1 タンパク質は、PON1 特異抗体を用いたサンドイッチ ELISA 法で測定します。PON1/apoJ は、前述した PON1 タンパク質値を apoJ 特異抗体を用いたサンドイッチ ELISA 法で測定した apoJ タンパク質値との比率を算出します。これらの測定系を用いた臨床検討で、冠動脈疾患では PON1 活性およびタンパク質量の低下していることが示されました4。 さらに、パラオキソナーゼ活性とアリルエステラーゼ活性の PON1 活性比をみることにより、PON1 遺伝子多型の一つである R192Q 多型5の表現型も識別できること (図1) がわかりました。PON1/apoJ は、apoJ が HDL-PON1 に局在することから、apoJ に対する相対的な PON1 の発現を評価し、この値は酸化ストレスのリスクを把握できる可能性があります6



血中 PAF-AH 測定系の特徴
PAF-AH は血中で、HDL 以外に LDL にも結合しています。われわれが開発した血中 PAF-AH 測定系は、PAF-AH 特異抗体を用いた ELISA 法に、HDL 分画試薬を組み合わせることにより、血中総 PAF-AH、 LDL 結合型および HDL 結合型 PAF-AH を測定することを可能としました7。HDL 結合 PAF-AH は、コレステロール逆転送系が亢進する状態、つまり個体の抗動脈硬化が活性化している状態では高値を示すことを報告していま8

今後の期待
動脈硬化は生体内の酸化ストレスが起因となり酸化 LDL の形成が病巣の進展に大きく影響することから、リポタンパク質に結合する抗動脈硬化因子である PON1 および PAF-AH 測定系は動脈硬化の病態を把握する有効な手段になると期待されます。



参考文献

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                3. Tslepis AD, Chapman JM. Inflammation, bioactive lipids and atherosclerosis: potential roles of
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                        4. Kujiraoka T, Oka T, Ishihara M, et al. A sandwich enzyme-linked immunosorbent assay for human
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                              5. Yunoki K, Naruko T, Inaba M, et. Al. Gender-specific correlation between plasma myeloperoxidase
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                                     and unstable coronary artery disease. Atherosclerosis, 2013;231(2):308-314.

                                      6. Kujiraoka T, Hattori H, Miwa Y, et al. Serum apolipoprotein J in health, coronary heart disease and
                                           type 2 diabetes mellitus. J Atheroscler Thromb. 2006;13(6):314-322.

                                            7. Kujiraoka T, Iwasaki T, Ishihara M, et al. Altered distribution of plasma PAF-AH between HDLs and
                                                 other lipoproteins in hyperlipidemia and diabetes. J Lipid Res. 2003;44(10):2006-2014.

                                                  8. Kujiraoka T, Hattori H, Ito M, et al. Effects of intravenous apolipoprotein A-I/phosphatidylcholine 
                                                      discs on paraoxonase and platelet-activating factor acetylhydrolase in human plasma nad tissue fluid.
                                                        Atherosclerosis. 2004;176(1):57-62.


                                                      2013.07 第1版

                                                      2017.03 第2版


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