CRTH2 (CD294)
免疫分野での新たなタンパク質

CRTH2 の発見
われわれは、Chemoattractant receptor-homologous molecule on Th2 cells (CRTH2: CD294) を発見しました。1990 年代後半、IgE 依存型アレルギーや液性免疫に関与しているヘルパー T 細胞の亜集団 Th2 細胞の解析をしていました。その過程で、この細胞に他のヘルパー T 細胞亜集団には発現していない未知の膜蛋白質が発現していることを見出しました。そのアミノ酸配列を既知の膜蛋白質と比較解析した結果、この分子は白血球に遊走を引き起こすケモアトラクタント (走化性因子) 受容体ファミリーと相同性が高いことがわかりました。このことから、この分子を CRTH2 と名付け 1999 年に報告しまし1さらにCRTH2は、2004 年の白血球分化抗原国際ワークショップで CD294 として登録されました。

CRTH2 はアレルギーに深く関与
CRTH2 は、発現細胞の解析よりアレルギー性炎症において重要な役割を担うことが示唆されました。発見後のさらなる解析により、CRTH2は Th2 細胞以外では好酸球および好塩基球で高発現していることがわかりまし2。これらの細胞は、いずれもアレルギー性炎症の局所に集積し炎症の増悪に関与することが知られています。このことは、CRTH2 とアレルギー性炎症との関連を強く示唆し、さらにそのリガンドを探る糸口になりました。最近、アレルギー発症に重要な役割を持つ細胞として2型自然リンパ球(ILC2) が注目されています3。CRTH2はILC2にも発現し活性化に関与することからも、アレルギー性炎症と深い関連性が考えられていま4


PGD受容体
われわれは、CRTH2 が肥満細胞から分泌されるプロスタグランジン D2 (PGD2) の受容体であることを解明しました。CRTH2 はケモアトラクタント受容体と相同性を持っているという特徴から、走化性因子としての活性を持った物質がCRTH2 に作用すると推察しました。また、その活性物質の産生細胞として、肥満細胞に注目しました。肥満細胞は、IgE 依存型アレルギーで中心的な働きをしている細胞であり、多様な炎症メディエーターを分泌する細胞です。われわれは、肥満細胞が分泌する産物のなかに、CRTH2 活性化物質が存在することを示し2、さらにこの物質がプロスタノイドと呼ばれる脂質メディエーターの 1 種の PGD2 であることを証明しまし5

治療薬の開発に貢献

アレルギー症状の治療薬として CRTH2 拮抗剤の開発が盛んに行われています。 われわれは CRTH2 発現細胞を PGD2 で刺激すると、炎症を亢進する細胞遊走およびサイトカイン産生亢進が誘導されることを証明しました5,6。さらに、CRTH2 ノックアウト (KO) マウス*を用いた研究では、CRTH2 が発現していないマウスで皮膚アレルギーおよびアレルギー性鼻炎症状が減弱することが証明されまし7,8 (図1)。これらの研究成果は、抗アレルギー剤として、CRTH2 拮抗剤が有望視される根拠となりました。CRTH2 拮抗剤は、喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患や慢性閉塞性肺疾患などを適応症として国内外の製薬メーカーで開発されていま9

研究を通じて医学の進歩に貢献

この研究に関連してわれわれが作製した成果物は、多くの研究者に提供され医学の進歩に貢献しています。われわれはこの研究において、以下の 4 つの成果物を提供してきました。① CRTH2 遺伝子発現ベクター、② CRTH2 強制発現細胞、③ 抗 CRTH2 抗体、④ CRTH2 KO マウス*。なかでも抗 CRTH2 抗体 (BM16) は、2013 年 4月の時点で 5 社の抗体販売メーカーにより全世界的に市販されています。さらに CRTH2 KO マウスは国内、海外の多数の施設に研究材料として提供され、特にアレルギーと炎症の分野で新たな知見を生み出しています。

* 東京医科歯科大学疾患遺伝子実験センター 中村正孝教授との共同研究で作製。



参考文献

 

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  • 2013.07 第1版
  • 2017.03 第2版



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