日和見感染菌

インフルエンザ菌(Haemophilusinfluenzae)

グラム陰性の小さな球桿菌で莢膜を有する株もいます。通性嫌気性、非運動性、カタラーゼ陽性、オキシダーゼ陽性、X因子(ヘミン)とV因子(NAD)を発育に必要とします。慢性気道感染症の急性憎悪の原因菌となり、肺炎を起こすこともあります。また、小児においては化膿性疾患を起こすこともあります。

β溶連菌

呼吸器感染症の原因菌として重要なS.pyogenes(A群溶連菌)が含まれます。グラム陽性の連鎖状の球菌で、通性嫌気性、非運動性、カタラーゼ陰性、5%ヒツジ血液寒天培地に透明な溶血環を作ります。S.pyogenesは化膿性炎症を起こす代表的な菌種であり、咽頭炎、扁桃炎、敗血症等を起こします。

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)

グラム陰性の桿菌で、偏性好気性、運動性有り、オキシダーゼ陽性、ブドウ糖を酸化的に分解。自然界に広く分布し、健常者には本来病原性の弱い菌ですが、入院患者、基礎疾患のある患者に対し難治性感染症をひき起こす院内感染の原因菌です。

肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)

グラム陽性の双球菌で莢膜を有し、カタラーゼ陰性、オプトヒン感性、胆汁溶解テスト陽性。口腔咽頭に常在しますが、肺炎を起こす代表的な菌種でもあります。近年、ペニシリンに耐性を示す株が増加しており、投薬に注意が必要です。

肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)

グラム陰性の桿菌で莢膜を有し、通性嫌気性、非運動性、VPテスト陽性、寒天培地上で粘性のある大きな集落を作ります。院内感染菌の1つで、呼吸器と尿路の感染症の原因になることが多いが、ほとんど全ての部位でこの菌による感染症が発現します。

セラチア菌(Serratia marcescens)

グラム陰性の桿菌で、通性嫌気性、運動性有り、DNase産生。環境中に見られるが、尿路感染症や難治性肺炎など日和見感染の原因菌となります。

カタル球菌(Moraxella catarrhalis, Branhamella catarrhalis)

グラム陰性の双球菌で、偏性好気性。この菌の多くはβラクタマ-ゼを産生しペニシリン等に耐性を示します。鼻咽腔粘膜に常在するが、しばしば呼吸器感染症、中耳炎、結膜炎の原因菌となります。

黄色ブドウ球菌(MRSA, MSSA)

グラム陽性の球菌で、通性嫌気性、カタラーゼ陽性、コアグラーゼ陽性、寒天培地上で淡黄色~黄色の集落を作ります。ヒトの鼻腔内に常在することもあるが、院内感染原因菌として重要で、罹患率死亡率共に高く注意する必要があります。S.aureusはメチシリンに対する感受性の違いにより、メチシリン感受性S.aureus(MSSA)とメチシリン耐性S.aureus(MRSA)に区分され、MRSAはメチシリンに多くの薬剤に耐性を示し、難治性の感染症に発展することもあります。

カンジタ(Candida sp.)

グラム陽性の亜球形の菌で、偏性好気性、出芽により増殖し仮性菌糸を形成します。日和見感染、院内感染の原因菌の一つで、あらゆる部位にカンジダ症をひき起こします。代表的菌種としてC.albicansがあります。