TCFDの提言に基づく情報開示

BMLグループは2022年6月、TCFD(Taskforce on Climate-related Financial Disclosures 気候変動関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対する賛同を表明しました。
今後TCFD提言に基づいた情報開示に積極的に取り組んでいきます。

ガバナンス・リスク管理

ガバナンス・リスク管理 体制図

BMLグループでは、代表取締役副社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置し、気候変動への対応を優先度の高い課題として認識し、気候変動のシナリオ分析(リスク・機会)を実施しています。
また、リスクのうち財務的影響と発生可能性から特に経営に大きな影響を与えるものを重要リスクとして識別しています。
気候変動に関するリスク・機会や目標とその進捗状況は同委員会で議論し、四半期ごとに取締役会へ報告しています。

戦略

IEA(国際エネルギー機関)が公表している気候変動シナリオを参照し、2050年時点における気候変動の影響を分析しています。
当社では、地球温暖化の急速な進行に対して抜本的なシステム移行を含めた厳しい対策が必要であるとの認識より、1.5~2℃/4℃シナリオを選択しています。

世界平均地上気温変化予測
4℃シナリオ
現状を上回る温暖化対策をとらなければ、産業革命時期比で3.2~5.4℃上昇
2℃シナリオ
厳しい対策を取れば、産業革命時期比で0.9~2.3℃上昇
1.5℃シナリオ
抜本的なシステム移行が達成された場合、高い確率で産業革命時期比で産業革命時期比で1.5℃未満の上昇

分析のプロセス

1.重要リスク・機会の特定
  • 医療・臨床検査に関連する気候変動リスク・機会の情報を収集
  • 自社で発生しうる移行・物理リスクと機会を特定
  • 自社事業への影響度からリスク・機会の重要度を評価
2.将来予測データの収集
  • 特定した重要リスク・機会に関する信頼度の高い外部予測データを収集
  • 2050年の将来像を1.5℃~2℃/4℃シナリオで予測
3.事業影響の試算
  • 収集した予測値と自社数値を用いて、重要度の高いリスク・機会によってもたらされる事業への財務影響をシナリオごとに試算
4.対応策の検討
  • 事業影響の特に大きい気候変動リスク・機会への対応方法を検討
  • 必要に応じ、推進体制を整備

2050年における事業影響額の試算

BMLグループが臨床検査事業を展開している日本における主な気候変動リスク・機会を外部情報に基づいて整理し、それぞれのリスク・機会に関する将来予測データを収集しました。これに基づいて、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会と気候変動に起因する物理リスク・機会について検討し、当社事業に2050年までに影響を与えうる重要なリスクと機会を特定しています。

例えば、異常気象の激甚化が進む想定シナリオにおいて、重要拠点への浸水やサプライチェーン断絶による検体の配送遅延・破棄など、販売機会の損失のリスクを特定した一方、BCPの観点から拠点強靭化に資する設備投資を適切に行なうことが競合他社との差別化につながり、販売機会にポジティブに影響するといった機会を特定しています。

分析の結果、いずれのシナリオでも事業継続に係る重大なリスクは想定されず、自社事業が気候変動に対して一定のレジリエンスを有していることを確認しました。

脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会

炭素価格、各国の炭素排出目標・政策
特定した
重要リスク・機会
顕在化しうる
時間軸
影響度潜在的な影響想定される対応策の例
1.5℃~2℃シナリオ4℃シナリオ
炭素税中期
リスク

事業活動から排出されるCO2に炭素税が課税された場合、最大で年間約1億円のコスト増加(2050年の炭素価格250ドル/tCO2と想定)

機会

検査プロセスの低炭素化による販 売機会の拡大

輸送車のEV転換による炭素税コストの減少

(影響は軽微と想定)

金銭的インパクトは大きくないものの脱炭素社会に適応し、機会に変えていく

税制優遇や排出権取引等の制度を活用し、低炭素化を推進する

電気代中期
リスク

電力小売単価の上昇による検査原価等のコスト増加

機会

電力小売単価の低下による検査原価等のコスト削減

1.5~2℃シナリオにおけるコスト増は吸収可能な範囲であり、影響は小さいが引き続きエネルギー効率改善に努める

照明器具のLED化や太陽光パネルの導入により消費電力を削減、自己充電能力を強化する

再生エネルギー
調達コスト
中期
リスク

再エネ設備導入・グリーン電力購入等の対応によるコスト増加

リスク

一定の再エネ化によるコスト増加(1.5~2℃シナリオと比較して軽微)

脱化石燃料化(ガス含む)に関してあらゆる選択肢を検討していく
プラスチック税中期
リスク

プラスチック課税によるコスト増加

機会

バイオマス由来容器や低炭素ガラス容器等の導入による販売機会の拡大

(プラスチック課税は適応されないと想定)プラスチック使用量の削減や廃棄物のリサイクル、非プラスチック製品の活用、サプライヤーとの協働などあらゆる選択肢を検討していく
低炭素・次世代技術の普及
特定した
重要リスク・機会
顕在化しうる
時間軸
影響度潜在的な影響想定される対応策の例
1.5℃~2℃シナリオ4℃シナリオ
既存設備の
切替コスト
中期
リスク

輸送車のEV転換と充電設備の導 入によって、年間約4億円のコスト増加

省エネ・再エネ設備の導入等によるコスト増加

機会

低炭素物流網や省エネ・再エネ設備導入によって環境の面で顧客から評価向上

リスク

一定のEV転換によって、年間約2億円のコスト増加(1.5~2℃シナリオと比較して軽微)

公的補助金を活用し、集配車両の入替、低炭素設備の導入をする

集配ルートの最適化、車両台数の削減等により検体輸送を効率化する

顧客企業からの評判変化、投資家からの評判変化
特定した
重要リスク・機会
顕在化しうる
時間軸
影響度潜在的な影響想定される対応策の例
1.5℃~2℃シナリオ4℃シナリオ
顧客企業からの
評判変化
長期
リスク

顧客企業の環境配慮に対する想定以上のニーズの高まりに対応できなかった場合、環境対応が遅れている企業と見なされて受注が減少する

機会

顧客企業の環境配慮に対する需要の高まりに適切に対応することで環境対応の進んでいる企業と認識されて受注が増加する

(影響は軽微と想定)適切な情報開示・対話を継続していく
投資家からの
評判変化
長期
リスク

ダイベストメントの動向が加速し、環境経営を実践していない企業への風当たりが強くなり、資金調達コスト、開示・エンゲージメントコストが増加する

機会

環境経営を実践することでサステナブルファイナンスが可能となり、低金利での資金調達につながる

(影響は軽微と想定)適切な情報開示・対話を継続していく

気候変動に起因する物理リスク・機会

降水・気象パターンの変化
特定した
重要リスク・機会
顕在化しうる
時間軸
影響度潜在的な影響想定される対応策の例
1.5℃~2℃シナリオ4℃シナリオ
水不足中期
リスク

水不足に伴うラボの検査停止・遅延による信用低下と販売機会損失(4℃シナリオと比較して軽微)

水の調達コストの増加(4℃シナリオと比較して軽微)

機会

ドライ検査の導入による競争力強化と水使用コストの減少(4℃シナリオと比較して軽微)

リスク

水不足に伴うラボの検査停止・遅延による信用低下と販売機会損失

水の調達コストの増加

機会

ドライ検査の導入による競争力強化と水使用コストの減少

各拠点の水リスク評価を実施する

排水の再利用で水使用量を削減する

純水装置の貯水タンクの大型化にかかる投資を行う

気象の変化中期
リスク

気象の変化や災害発生に伴う物流ルートの途絶、検体の配送遅延・停止、ラボの検査停止・遅延による販売機会損失(4℃シナリオと比較して軽微)

災害対策コストの増加(4℃シナリオと比較して軽微)

機会

災害対応を通じた競争力とステークホルダーからの評価の向上(4℃シナリオと比較して軽微)

リスク

気象の変化や災害発生に伴う物流ルートの途絶、検体の配送遅延・停止、ラボの検査停止・遅延による販売機会損失・災害対策コストの増加

機会

災害対応を通じた競争力とステークホルダーからの評価の向上

ロードヒーティングや無停電装置の導入等を通じ、気象パターンの変化に対するレジリエンスを強化する
平均気温の上昇
特定した
重要リスク・機会
顕在化しうる
時間軸
影響度潜在的な影響想定される対応策の例
1.5℃~2℃シナリオ4℃シナリオ
空調負荷長期
リスク

検体の輸送・保管時の温度管理コスト、空調機器への設備投資・修繕コストの増加(約2億円)

検査不能リスク上昇、検査精度低下による販売機会の縮小

リスク

検体の輸送・保管時の温度管理コスト、空調機器への設備投資・修繕コストの増加(約5億円)

検査不能リスク上昇、検査精度低下による販売機会の縮小

コストは吸収可能な範囲であり、影響度は小さいが引き続きエネルギー効率改善に努める

高効率熱源機器設備の導入により、負荷削減に取り組む

検査室内の温度管理強化、高気温を想定した検査機器選定を進める

各種検査需要中期
リスク

気温の上昇に伴う、人流の減少と受診控えの増加(4℃シナリオと比較して軽微)

新規検査への対策コストの増加

機会

感染症・食中毒患者数増加に伴う新規検査・食品検査需要の対応による販売機会の拡大(4℃シナリオと比較して軽微)

リスク

気温の上昇に伴う、人流の減少と受診控えの増加

新規検査への対策コストの増加

機会

感染症・食中毒患者数増加に伴う新規検査・食品検査需要の対応による販売機会の拡大

気温上昇に関連した感染症市場への対応を強化する
労働環境の変化短期
リスク

従業員の健康管理コストの増加(4℃シナリオと比較して軽微)

リスク

従業員の健康管理コストの増加

高気温に対応可能な労働環境を整備する
海面上昇、異常気象の激甚化
特定した
重要リスク・機会
顕在化しうる
時間軸
影響度潜在的な影響想定される対応策の例
1.5℃~2℃シナリオ4℃シナリオ
海面の上昇長期(影響は軽微と想定)
リスク

港湾被害による輸送遅延や沿岸拠点での損害・検体の供給遅延が発生する

水害対策に伴うラボ・事務所移転のコストが増加する

BCPの観点から物流網・拠点強靭化、最適化を引き続き検討していく
落雷長期
リスク

落雷による電力・物流等のインフラの停滞影響(4℃シナリオと比較して軽微)

ラボの落雷被害に伴う機器修繕費、再検査コストの増加(0.1億円弱)

リスク

落雷による電力・物流等のインフラの停滞影響

ラボの落雷被害に伴う機器修繕費、再検査コストの増加(約0.1億円)

落雷や停電を想定し拠点のレジリエンスを強化する
洪水による被害長期
リスク

風水災による一定の販売機会の損失、顧客からの信用低下、在庫確保・物流にかかるコスト、検査員等の人員調達コストの増加

検査ラボへの浸水による機器等の損害や検査ライン停止、サプライヤー拠点の被災による逸失利益(約7億円)

機会

集配・搬送機能やラボ機能等のBCP強化による市場競争力の向上、新規取引の創出

在庫調整等を通じたサプライヤーとの関係強化

リスク

風水災に伴う検体の配送遅延等による販売機会の損失、顧客からの信用低下、在庫確保・物流にかかるコスト、検査員等の人員調達コストの増加

検査ラボへの浸水による機器等の損害や検査ライン停止、サプライヤー拠点の被災による逸失利益(約12億円)

機会

集配・搬送機能やラボ機能等のBCP強化による市場競争力の向上、新規取引の創出

在庫調整等を通じたサプライヤーとの関係強化

BCPの観点から物流網・拠点強靭化、最適化を引き続き検討していく

緊急事態を想定した人員確保体制の構築とサプライヤーとの連携を強化する

保険料短期
リスク

拠点の被災リスクに応じた火災保険料の増加(約0.1億円)

リスク

拠点の被災リスクに応じた火災保険料の増加(約0.2億円)

コストは吸収可能な範囲であり、影響度は小さい

指標と目標

BMLグループでは、GHG排出量(総量・Scope1,2)について算出を行ない、GHG排出量削減目標の達成に向けた取り組みを進めています。
また今後、Scope3の算定と開示に向けて取り組んでまいります。