AML with inv(3)(q21.3q26.2) or t(3;3)(q21.3;q26.2); GATA2,MECOM(EVI1)
[概要]
AML with inv(3)(q21.3q26.2) or t(3;3)(q21.3;q26.2); GATA2,MECOM(EVI1)はAML全体の1%~2%にみられ、成人の症例がほとんどで小児には稀である。巨核球系の異形成所見が特徴的で血小板数は正常または増加する例が多い。腫瘍細胞は骨髄系、骨髄単球系、単球系、巨核球系などさまざまな分化傾向を示し、多系統の異形成もよく認められる。MECOM(EVI1)遺伝子の高発現を伴い、予後は極めて不良である。
[症例]
14歳、女性。1か月前より、微熱、活気不良があり、近医受診し血液検査を行ったところ、血小板増加を認め紹介受診。既往歴、家族歴特記すべきことなし。身体所見でも顔色不良を認める以外、特記すべき異常所見を認めず。
[末梢血検査所見]
WBC | 8100/μL |
Blast | 9% |
Myelo | 1% |
Seg | 6% |
Stab | 45% |
Lympho | 25% |
Mono | 14% |
RBC | 225万/μL |
Hb | 7.6g/dL |
Ht | 22.7% |
MCV | 100.9fL |
PLT | 86.9万/μL |
Ret | 1.3% |
[骨髄形態診断]
骨髄は過形成、顆粒球系、赤芽球系はやや増加、巨核球系は著増している。芽球を62.7%認める。芽球は中型〜大型、細胞質は淡青色~灰色で舌様の突起を示すものを多く認め、一部には微細なアズール顆粒が認められる。核は基本的に円形であるが、不整形を示すものも少なくなく、クロマチン構造はレース状、一部には強いクロマチン凝集がみられる。MPO染色は陰性、エステラーゼ染色は特異的、非特異的ともに陰性である。
顆粒球系の50%以上に低〜無顆粒好中球、偽ペルゲル核異常、巨大好中球、赤芽球系の10%〜50%未満に軽度な巨赤芽球様変化、核辺縁不整、2核赤芽球の異形成所見を認める。巨核球系のほとんどすべてが微小かつ単核の巨核球である。また、巨大かつ低顆粒の血小板を認める。
以上から、AML with multilineage dysplasiaが示唆される骨髄所見である。
[骨髄血細胞表面マーカー]
マーカー | 陽性率(%) |
---|---|
CD15 | 67 |
CD117 | 76 |
CD13 | 83 |
CD33 | 78 |
CD56 | 58 |
CD4 | 63 |
CD7 | 71 |
HLA-DR | 76 |
[染色体・遺伝子検査]
[染色体]G分染法(PHA無添加24・48時間培養)
45,XX,inv(3)(q21q26.2),-7[20]
[FLT3-ITD]
検出されず
[解説]
末梢血での血小板の増加と骨髄での微小巨核球などの異形成を示す巨核球の増加はAML with inv(3)(q21.3q26.2) or t(3;3)(q21.3;q26.2);GATA2,MECOM(EV1)に典型的所見である。細胞表面マーカー上は、CD13、CD33、CD117、HLA-DR、CD34、CD38などの未熟骨髄系マーカーが陽性を示すが、本症例のようにCD7やCD56が陽性を示す症例や、巨核球系マーカーのCD41、CD61が陽性を示す症例もある。染色体ではmonosomy7、del(5q)を高率に合併する。
参考文献
- Bitter MA,Neilly ME,Le Beau MM,et al.Rearrangements of chromosome 3 involving bands 3q21 and 3q26 are associated with normal or elevated platelet counts in acute nonlymphocytic leukemia. Blood.66(6):1362-70.1985
- Medeiros BC,Kohrt HE,Arber DA,et al. Immunophenotypic features of acute myeloid leukemia with inv(3)(q21q26.2)/t(3;3)(q21;q26.2)Leuk Res.34(5):594-7.2010
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