AML, not otherwise specified
[概要]
AML,not otherwise specified(急性骨髄性白血病、非特定型)には、AML with recurrent genetic abnormalities(反復性遺伝子異常を有するAML)、AML with myelodysplasia-related changes(骨髄異形成関連の変化を有するAML)、Therapy-related myeloid neoplasms(治療関連骨髄性腫瘍)に該当しないAMLが含まれる。形態学と細胞表面マーカーからFAB分類に従って病型分類されるが、NPM1,CEBPA変異の情報を加味すると、各病型の間には予後の差は認められない。
なお、WHO分類2017年版では急性赤白血病のerythroid/myeloid type(赤芽球系がANCの50%以上かつ骨髄芽球がNECの20%以上)が除外された。したがって、赤芽球系が50%以上と増加していても骨髄芽球がANCの20%未満の場合はMDSの診断になる。
[症例1]
7歳、男性。1ヶ月前より顔色不良に気づかれていた。かぜ症状で前医を受診した際に貧血を指摘され血液検査が行われた。既往歴、家族歴に特記すべきことなし。身体所見では顔色不良、眼瞼結膜貧血様。肝臓右肋骨弓下4cm、脾臓左肋骨弓下3cm触知。頸部、腋窩、鼠蹊部に最大2cm径のリンパ節を複数触知。
[末梢血検査所見]
WBC | 9900/μL |
Blast | 80% |
Seg | 2% |
Lympho | 16% |
Mono | 2% |
RBC | 191万/μL |
Hb | 6.2g/dL |
Ht | 17.8% |
MCV | 93.2fL |
PLT | 6.0万/μL |
Ret | 0.7% |
[骨髄形態診断]
骨髄は軽度低形成、顆粒球系、赤芽球系は減少し、巨核球系は標本上に認められない。芽球を92.9%認める。芽球は中型でN/C比大、細胞質は狭く淡青色で透明感がありアズール顆粒はほとんど認められない。核は円形、核網は平面的で均一に濃染され、リンパ系細胞に類似している。
MPO染色、エステラーゼ染色はすべて陰性である。顆粒球系には異形成を認めない。赤芽球系の少数(10%前後)に軽微な巨赤芽球様変化、核融解などの異形成を認める。
以上から、MPO陰性の急性白血病が示唆される。芽球の性状からAML with minimal differentiation(急性骨髄性白血病最未分化型、FAB分類M0)がもっとも疑われる。
[骨髄血細胞表面マーカー]
マーカー | 陽性率(%) |
---|---|
CD13 | 1 |
CD33 | 91 |
CD117 | 90 |
CD34 | 80 |
CD7 | 92 |
TdT | 1 |
cCD3 | 1 |
CD19 | 3 |
CD79a | 6 |
HLA-DR | 50 |
[染色体・遺伝子検査]
[染色体]G分染法(PHA無添加24・48時間培養)
47,XY,+11[18]
46,XY[2]
[キメラ遺伝子スクリーニング]
検出されず
[FLT3-ITD]
検出されず
[解説]
MPO染色陰性のAMLで異形成が1系統以下である場合、AML with minimal differentiation(急性骨髄性白血病最未分化型)、acute monoblastic leukemia(急性単芽球性白血病)、pure erythroid leukemia(急性赤白血病)、acute megakaryoblastic leukemia(急性巨核芽球性白血病)の病型が鑑別にあがる。
AML with minimal differentiation(急性骨髄性白血病最未分化型)の芽球は中型で、N/C比大、アズール顆粒は認められてもわずかであり、核の濃染の具合がリンパ芽球に類似する。
細胞表面マーカーでは、骨髄系マーカーであるCD33、CD117、未熟造血細胞マーカーであるCD34、CD38、HLA-DRを発現するものの、骨髄系分化抗原や単球系分化抗原(MPO、CD14、CD64、CD65、CD11cなど)、リンパ球系マーカー(CD19、CD79a、cCD3)の発現はない。
[症例2]
11歳、女性。7日前より38度台の発熱と胸腹部の紫斑を認め、紫斑が徐々に増悪し血液検査が行われた。既往歴、家族歴に特記すべきことなし。身体所見では、顔色不良、胸腹部、四肢に大小不同の紫斑を多数認める。肝臓右肋骨弓下3cm、脾臓左肋骨弓下3cm触知。
[末梢血検査所見]
WBC | 430000/μL |
Blast | 95% |
Seg | 5% |
Lympho | 2% |
Mono | 1% |
RBC | 234万/μL |
Hb | 6.5g/dL |
Ht | 20.8% |
MCV | 88.8fL |
PLT | 1.9万/μL |
Ret | 2.9% |
[骨髄形態診断]
骨髄は軽度過形成、顆粒球系、赤芽球系、巨核球系はいずれも著しく減少している。芽球の増加(ANC中81.2%、NEC中92.3%)を認める。芽球は中型〜大型でN/C比大、青色の細胞質には多くのアズール顆粒を認める。一部の芽球にはアウエル小体が認められる。核は基本的に円形、核不整も認められる。核網は微細顆粒状で、核小体を認める。
MPO染色は陽性(88%)、NSE染色は陰性である。
顆粒球系の50%未満に低顆粒好中球、偽ペルゲル核異常の異形成を認める。赤芽球系、巨核球系には異形成を認めない。
以上から、AML without maturation(急性骨髄性白血病未分化型、FAB分類M1)が示唆される。
[骨髄血細胞表面マーカー]
マーカー | 陽性率(%) |
---|---|
CD13 | 20 |
CD33 | 82 |
CD15 | 50 |
CD117 | 84 |
CD65 | 32 |
MPO | 98 |
CD34 | 57 |
HLA-DR | 92 |
[染色体・遺伝子検査]
[染色体]G分染法(PHA無添加24・48時間培養)
46,XX[20]
[FLT3-ITD]
検出されず
[解説]
MPO染色陽性のAMLで50%以上の異形成が1系統以下である場合、顆粒球系ないしは単球系の病型が考えられる。これらの鑑別には、顆粒球系および単球系に分化した細胞の割合が重要である。急性AML without maturation(骨髄性白血病未分化型)ではNEC中、骨髄芽球が90%以上を占めることが診断の条件である。骨髄芽球は中型からやや大型で、細胞質は淡い好塩基性を呈し、多数のアズール顆粒が認められる。核は円形ないし不整型で、核クロマチン構造は繊細、核小体を1〜数個認める。MPO染色は一般に中等度以上陽性を示す。
細胞表面マーカーは骨髄系マーカーのMPO、CD13、CD117などが陽性で骨髄幼若細胞マーカーのCD34、HLA-DRも陽性であることが多い。
本症例ではt(6;9)で見られるような暗い色調の顆粒を有する好酸球の増加を認めたが、染色体は正常核型であった。
[症例3]
13歳、女性。4日前より発熱あり前医で血液検査が行われ、白血球増加を認め紹介。既往歴に低出生体重児、軽度の発達障害あり。家族歴に特記すべきことなし。顔色不良と眼瞼結膜に貧血を認める以外、身体所見に特記すべき異常なし。
[末梢血検査所見]
WBC | 139000/μL |
Blast | 85% |
Seg | 2% |
Lympho | 6% |
Mono | 12% |
RBC | 289万/μL |
Hb | 10.0g/dL |
Ht | 22.3% |
MCV | 77.2fL |
PLT | 4.6万/μL |
Ret | 1.9% |
[骨髄形態診断]
骨髄は過形成、顆粒球系は増加、赤芽球系は減少、巨核球系は認められない。骨髄芽球をANCの73.3%、NECの79.4%に認める。芽球は中型でN/C比大、好塩基性の細胞質に多数のアズール顆粒を認める。アウエル小体を持つものも認められる。核は不整形、核網はやや繊細で比較的明瞭な核小体を有している。MPO染色は陽性(90%以上)、CAE染色陽性(12%)、NSE染色は陰性である。成熟顆粒球は減少(17.2%)し、偽ペルゲル核異常の異形成を50%未満に認める。赤芽球系に異形成は認めない。
以上から、AML with maturation(急性骨髄性白血病分化型、FAB分類M2)が示唆される。
[骨髄血細胞表面マーカー]
マーカー | 陽性率(%) |
---|---|
CD13 | 94 |
CD33 | 95 |
CD117 | 93 |
CD65 | 35 |
MPO | 37 |
CD34 | 89 |
HLA-DR | 89 |
[染色体・遺伝子検査]
[染色体]G分染法(PHA無添加24・48時間培養)
46,XX[20]
[FLT3-ITD]
検出されず
[解説]
AML with maturation(急性骨髄性白血病分化型、FAB分類M2)は、顆粒球系成熟細胞がNECの10%以上かつ単球系細胞がNECの20%未満であることが診断の条件となる。
芽球形態はAML without maturation(急性骨髄性白血病未分化型、FAB分類M1)と同様、中型からやや大型で、細胞質は淡い好塩基性を呈し、多数のアズール顆粒が認められる。核は円形ないし不整型で、クロマチン構造は繊細、核小体を1〜数個認める。MPO染色は一般に中等度以上陽性を示す。
細胞表面マーカーはMPO、CD13、CD117が陽性でCD34、HLA-DRも陽性であることが多い。
[症例4]
8歳、女性。6日前に39度台の発熱あり前医を受診。咽頭発赤を認め溶連菌迅速検査陽性だったため抗菌剤を処方され内服したが、その後も解熱せず血液検査が行われた。既往歴に、気管支喘息あり。家族歴に特記すべきことなし。身体所見では顔色不良、胸腹部、四肢に大小不同の紫斑を多数認める。肝臓右肋骨弓下4cm、脾臓左肋骨弓下3cm触知。
[末梢血検査所見]
WBC | 49900/μL |
Blast | 67% |
Seg | 4% |
Lympho | 7% |
Mono | 22% |
RBC | 377万/μL |
Hb | 10.5g/dL |
Ht | 30.2% |
MCV | 80.1fL |
PLT | 4.6万/μL |
Ret | 0.9% |
[骨髄形態診断]
骨髄は正形成、顆粒球系優位で、巨核球系は減少している。骨髄芽球を42.7%、単芽球を25.5%、前単球を1.5%を認め、芽球相当細胞の合計は69.7%である。単球を12.8%認める。
骨髄芽球は中型でN/C比大、細胞質は好塩基性、核網繊細で核小体は不明瞭。単芽球は大型でN/C比小、細胞質は灰青色で一部は空胞を有し、核網繊細で大型の核小体を認める。
骨髄芽球はMPO染色陽性、CAE染色陽性、NSE染色陰性である。単芽球はMPO染色弱陽性、CAE染色陰性、NSE染色陽性でNaFで阻害される。
顆粒球系細胞の10%〜50%未満に低〜無顆粒好中球、偽ペルゲル核異常の異形成を認める。赤芽球系、巨核球系には明らかな異形成を認めない。
骨髄中の芽球が20%以上かつ骨髄系細胞、単球系細胞ともANCの20%以上を占める。また、末梢血では単球増加(>5000/μL)を認める。以上から、acute myelomonocytic leukemia(急性骨髄単球性白血病、FAB分類M4)が示唆される。
[骨髄血細胞表面マーカー]
マーカー | 陽性率(%) |
---|---|
CD13 | 98 |
CD33 | 96 |
CD117 | 94 |
CD64 | 39 |
MPO | 55 |
CD34 | 68 |
HLA-DR | 4 |
[染色体・遺伝子検査]
[染色体]G分染法(PHA無添加24・48時間培養)
47,XY,+8[1]/46,XY[19]
[FLT3-ITD]
陽性
[解説]
Acute myelomonocytic leukemia(急性骨髄単球性白血病、FAB分類M4)では、末梢血または骨髄に成熟顆粒球ないしその前駆細胞、さらに成熟単球ないしその前駆細胞を各々20%以上認める。末梢血中の単球増加(>5000/μL)も特徴的である。
顆粒球系白血病細胞の性状は顆粒球系AMLに近く、MPO染色も一般に中等度以上の陽性を示す。単球系白血病細胞は大型の核小体が明瞭で未熟なクロマチン構造の核をもつ単芽球から、核小体が不明瞭で核クロマチンも成熟した単球に近いものまで、症例によりさまざまである。NSE染色およびエステラーゼ二重染色は顆粒球系細胞と単球系細胞芽球の比率の判定に有用であり、また二重染色陽性芽球の存在はこの病型を示唆する。
細胞表面マーカーはMPO、CD13、CD15、CD65の骨髄系マーカーが一般的に陽性を示し、CD14、CD4、CD11c、CD64、CD36などの単球系マーカーのいずれかも陽性を示す。CD117、CD34、HLA-DRの未熟造血細胞マーカー陽性の細胞集団もしばしば存在する。
[症例5]
8歳、女性。6日前より顔面、胸腹部の紫斑を認めた。徐々に増大するため受診。既往歴、家族歴に特記すべきことなし。身体所見には顔色不良、眼瞼結膜軽度貧血あり。顔面、胸腹部、四肢に大小不同の紫斑を多数認める。左後頸部リンパ節腫脹(2cm)、肝臓右肋骨弓下4cm。
[末梢血検査所見]
WBC | 95900/μL |
Blast | 86% |
Seg | 1% |
Lympho | 11% |
Mono | 1% |
RBC | 368万/μL |
Hb | 10.5g/dL |
Ht | 30.9% |
MCV | 83.9fL |
PLT | 3.0万/μL |
Ret | 0.3% |
[骨髄形態診断]
骨髄は過形成、顆粒球系、赤芽球系はともに減少、巨核球系は認められない。芽球増加(ANCの89.8%、NECの79.4%)を認める。芽球は中型〜大型、細胞質は淡灰青色で一部に空胞形成を認める。核は円形で細胞の中央に位置し、クロマチン構造は粗で核小体は認めない。
MPO染色は陰性、NSE染色陽性でNaFで阻害される。CAE染色は陰性である。顆粒球系、赤芽球系に異形成は認めない。単球の増加はみられない。
以上から、acute monoblastic leukemia(急性単芽球性白血病、FAB分類M5a)が示唆される。
[骨髄血細胞表面マーカー]
マーカー | 陽性率(%) |
---|---|
CD13 | 95 |
CD33 | 99 |
CD117 | 96 |
CD64 | 28 |
CD65 | 47 |
CD34 | 79 |
CD7 | 49 |
CD4 | 59 |
HLA-DR | 96 |
[染色体・遺伝子検査]
[染色体]G分染法(PHA無添加24・48時間培養)
47,XX,+8[20]
[キメラ遺伝子スクリーニング]
検出されず
[FLT3-ITD]
陽性
[解説]
Acute monoblastic leukemia(急性単芽球性白血病、FAB分類M5a)、 Acute monocytic leukemia(急性単球性白血病、FAB分類M5b) では、白血病細胞の80%以上を単球系細胞が占める。単芽球に加え前単球も芽球相当としてカウントされる。顆粒球系細胞は認められても、その比率は20%未満である。さらに単球系白血病細胞の80%以上を単芽球が占めるものをAcute monoblastic leukemia(急性単芽球性白血病、FAB分類M5a)とする。
単芽球は中型から大型で、細胞質は広めで淡灰青色、核は円形で一部に湾入を有するものもあり、核網は骨髄芽球に比べやや粗剛である。細胞質にはわずかにアズール顆粒や空胞を認めるものもある。通常はNSEが陽性、MPO陰性であるが、NSE陰性でも否定はできない。
細胞表面マーカーではCD13、CD33、CD15、CD65の骨髄系マーカーが様々な程度に陽性を示し、CD14、CD4、CD11c、CD64、CD36などの単球系マーカーの少なくとも2つ以上が通常陽性を示す。CD117、HLA-DRも陽性のことが多い。MPOは通常陰性である。
[症例6]
10歳、女性。3日前より呼吸困難が出現し、胸部レントゲン撮影で胸水貯留を指摘され紹介受診。既往歴、家族歴に特記すべきことなし。身体所見には顔色不良、胸腹部、四肢に大小不同の紫斑を多数認める。肝臓右肋骨弓下2cm。
[末梢血検査所見]
WBC | 380000/μL |
Blast (Monoblast, Promono) | 93% |
Seg | 2% |
Lympho | 2% |
Mono | 3% |
RBC | 319万/μL |
Hb | 10.8g/dL |
Ht | 32.3% |
MCV | 101.2fL |
PLT | 8.2万/μL |
Ret | 0.9% |
[骨髄形態診断]
骨髄は軽度過形成、顆粒球系、赤芽球系、巨核球系はいずれも減少している。単芽球を62.7%、前単球を15.3%、単球を10.5%認め、単球系細胞の合計は88.5%で、単球系細胞のうち単芽球の占める割合は70.8%である。
単芽球は大型、細胞質は淡い好塩基性でアズール顆粒は認められず、核は円形、一部湾入などの不整を有する。2核の単芽球もみられる。
芽球はMPO染色弱陽性、CAE染色陰性、NSE染色陽性でNaFで阻害される。
顆粒球系の10%〜50%未満に低〜無顆粒好中球、偽ペルゲル核異常、赤芽球系の10%前後に巨赤芽球様変化を認める。巨核球系には明らかな異形成を認めない。
以上から、 acute monocytic leukemia(急性単球性白血病、FAB分類M5b)が示唆される。
[骨髄血細胞表面マーカー]
マーカー | 陽性率(%) |
---|---|
CD13 | 49 |
CD33 | 97 |
CD15 | 50 |
CD117 | 55 |
CD64 | 40 |
MPO | 64 |
CD34 | 57 |
HLA-DR | 95 |
[染色体・遺伝子検査]
[染色体]G分染法(PHA無添加24・48時間培養)
46,XX[20]
[キメラ遺伝子スクリーニング]
検出されず
[FLT3-ITD]
陽性
[解説]
Acute monoblastic leukemia(急性単芽球性白血病、FAB分類M5a)とAcute monocytic leukemia(急性単球性白血病、FAB分類M5b)の鑑別は、単球系細胞中の単芽球の比率で行う。単芽球が80%未満の場合は急性単球性白血病の診断になる。単芽球と前単球は核の湾入、核小体の明瞭さ、細胞質の色合い(青味)などを参考に区別する。通常はNSE染色陽性、MPO染色陰性であるが、本症例のようにNSE染色が陰性であったりMPO染色がドット状に陽性を示す症例もある。
細胞表面マーカーはCD14、CD4、CD11c、CD64、CD36などの単球系マーカーが陽性を示すなど急性単芽球性白血病とほぼ同様であるが、急性単芽球性白血病とは異なりMPO陽性を示す症例もある。
[症例7]
9ヶ月、女性。3日前より哺乳不良となり受診。顔色不良を認め血液検査が行われた。既往歴,家族歴に特記すべきことなし。身体所見では、顔色不良、胸腹部、四肢に大小不同の紫斑を多数認める。肝臓右肋骨弓下5cm、脾臓左肋骨弓下5cm触知。
[末梢血検査所見]
WBC | 75000/μL |
Blast | 47% |
Seg | 2% |
Lympho | 6% |
Mono | 12% |
RBC | 289万/μL |
Hb | 4.9g/dL |
Ht | 22.3% |
MCV | 77.2fL |
PLT | 1.2万/μL |
Ret | 1.9% |
[骨髄形態診断]
骨髄は正形成、顆粒球系、赤芽球系は減少、巨核球系は著減している。
芽球を90.8%認める。芽球の形態は多様で、大きさも小型から大型のものまで多彩である。細胞質は淡い好塩基性でbleb様の突起がみられる細胞もある。核網は繊細なものから粗剛なのもと多彩である。MPO染色、CAE染色は陰性、NSE染色は弱陽性(NaF阻害なし)である。顆粒球系には明らかな異形成を認めない。赤芽球系の10%未満に核融解を認める。
以上から、MPO染色陰性の急性白血病で、Acute megaroblastic leukemia(急性巨核芽球性白血病、FAB分類M7)がもっとも疑われる骨髄所見である。
[骨髄血細胞表面マーカー]
マーカー | 陽性率(%) |
---|---|
CD13 | 84 |
CD33 | 98 |
CD117 | 98 |
CD41 | 94 |
CD42b | 54 |
MPO | 0 |
CD34 | 99 |
CD56 | 98 |
HLA-DR | 1 |
[染色体・遺伝子検査]
[染色体]G分染法(PHA無添加24・48時間培養)
47,XX,+19[18]/48,idem,+19[2]
[FLT3-ITD]
検出されず
[解説]
Acute megaroblastic leukemia(急性巨核芽球性白血病、FAB分類M7)は芽球の50%以上が巨核球系の分化を示すAMLである。ただし、t(1;22)、inv(3) or t(3;3)、骨髄異形成の変化を伴うAMLなどは除外される。診断の数ヶ月前から血小板減少が先行してみられるなど、比較的緩徐な臨床経過で発症することが少なくない。このような場合もMDSから進展したAMLとはしない。
通常血小板減少などの血球減少を示すが、血小板増加を示す症例もある。
典型例の芽球は中型から大型で、核は円形で核クロマチンは繊細でしばしば明瞭な核小体を有する。細胞質は辺縁不整で細胞突起(bleb)を呈するものを散見する。小型でN/C比が高いリンパ芽球様の形態を示す症例もある。一つの症例でこれらの多様な芽球が見られることも少なくない。ときに多核の芽球や微小巨核球を認める。通常MPO陰性、NSE陰性であるが、本症例のようにNSEが弱陽性を示す症例もある。
細胞表面マーカーでは血小板糖蛋白のCD41、D61が陽性を示す。CD41が標的とする血小板膜抗原GP IIbとCD61が標的とする血小板膜抗原GPⅢaはGPⅡb/Ⅲa複合体を形成しているため、CD41とCD61の陽性率はほぼ同じになる。より成熟した血小板マーカーのCD42はやや陽性率が低い。
染色体異常は染色体数の増加、減少など多様であるが、本症例の+19は+21などとともに多いものの1つである。
参考文献
- Walter RB, Othus M, Burnett AK, et al. Significance of FAB subclassification of "acute myeloid leukemia, NOS" in the 2008 WHO classification: analysis of 5848 newly diagnosed patients. Blood 121:2424-31.2013
- Inaba H, Zhou Y, Abla O, et al.Heterogeneous cytogenetic subgroups and outcomes in childhood acute megakaryoblastic leukemia: a retrospective international study Blood. 126:1575-84. 2015
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